小物忌神社

　大和国龍田神社より勧請の由と伝えられているが、年月は不詳である。
　応仁の乱後国群乱れて神社の崇敬も衰え、神号さえ猥りに書き改めるようになり、小物忌神社も亦衰微して、元文三年小物忌神社の名を大宮神社と改めたところ、国内の古社競って小物忌神社の美名を獲得しようと、至る所に小物忌神社と称する社が続出。しかしながら、一として見るべき証左もなければ、何に拠れるのか詳らかに出来ず、此に於いて、酒田市財団法人光丘文庫長白崎良弥痛く之を慨き、自ら挺身私費を投じ、熱誠を以て講究調査に当たった結果、飛島の村社大宮神社こそは、由緒正しい小物忌神社の世に隠れませし真の御姿であることを発見し、匆卒筆を執って「出羽国小物忌神社考」四巻を草し、次々と印刷公表し、又斯道の大家先生に意見を求めたが、誰一人として反対する者もなく、各関係機関に陳情、復古として大宮神社を小物忌神社と社名変更の請願書を提出。その後、神祇院より諸員を特派して実地調査する等の結果、満場一致にて可決確定、昭和十七年七月十日付けにて変更が認められる。
　延喜式に「大和国龍田神社は風の神級長津彦命・級長戸辺命の二神を祀る。崇神天皇の御代、五穀、悪き風荒き水に遭いて年まねく殃わるるを、天皇憂い給いて祈誓して、龍田立野の小野に神社を建て之を祭りき」と見える。小物忌神社は龍田神社と御同神の故を以って、小物忌神社の位置を五穀の神とし、大陸から吹いてくる荒き風を緩和して本土に送り、あるいは津波のような悪しき水を防いで住民を安穏せしめているのである。
　以来六月十五日を例祭日としてきたが、近年人口の過疎化が進み、併せて生産構造の変革から従前通りの例斎行困難となり、変更承認を得て平成八年より四月二十日とする。