鳥栖市の奥座敷、河内町の標高350mあまりの高所に位置する本城山萬歳寺(臨済宗南禅寺派)は、応永年間はじめ(1394~1402)に、以亨得謙禅師(?~1402)を開山に臨済宗の寺院として創建されたと伝えられます。
萬歳寺には創建当初より伝存するものとおもわれる仏像が4体まつられています。このうち宝冠釈迦如来像、地蔵菩薩像および傳大士像は、作風や構造上の特徴から、鎌倉時代末期から南北朝時代にかけて臨済寺院で活躍し、足利将軍家にも重用された「院派仏師」により同時期、同仏所でつくられたものと考えられます。当代一流の仏師が起用されているところからも、この時代を代表する禅僧の1人である以亨得謙禅師の創建になる萬歳寺にふさわしく、京都五山文化との密接なつながりが想像されます。また、誕生仏は朝鮮・高麗時代にかの地で製作されたもので、当時の北部九州地域と朝鮮半島との交流の深さがしのばれます。
萬歳寺は近世以降のある期間、無住の状態が長く続き、一時は荒廃寸前の時期もありましたが、こうした危機を乗り越えて、以亨得謙禅師ゆかりの品々をはじめ、創建当初からの遺品が少なからず、600年あまりの時を越えて、まさに奇跡的に伝来していることが近年の調査であきらかとなりました。